mampukuT’s blog

某所で小学校教諭として働いています。教育につながる(はずの)内容を書きます。

幸せとは① 【幸福とは何か ― 長谷川 宏】

今回のテーマは、「そもそも、幸せとはどのような状態か」です。

皆さんも、「自分は何のために生まれたのか」「自分の未来は良いものになるのか」ということを考えたことがあるかと思います。これはすごく個人的な問いで、一人一人に納得できる答えの形があり、他人の答えとあなたの答えは大きく異なるでしょう。

しかし、 自分の人生を良いものにしたい という思いは誰しもがもっていて、そうなるように願っているはずです。

 

私は義務教育という国民全員が通る道で、教員をしています。この立場では、様々な背景をもつ子供と関わります。

その中で、誰しもが人生をいいものにしたいと願うのであれば、 様々な背景をもつ人の未来がよいものになる支援 を考える必要があります。前回の記事で書いた、「(教育の目標となる)望ましい姿=本人が望む姿」の考え方です。

 

良い人生の過ごし方には何通りもあり、直接的に一人一人の人生を良い人生に導くことはできません。しかし、良い人生を過ごしている人はおそらくみんなが「幸せ」を感じていて、その精神状態に近づいていけるように導くことはできるのではないでしょうか。

つまり、「良い人生=本人が幸せだと感じられる人生」という定義をすることで、より多くの人の人生を良いものに出来ると考えるのです。

 

では、「幸せな状態」とはどのような状態なのでしょうか。この定義の仕方によって、議論のスケール感が変わってきます。

私が日常で一番幸せを感じるのはお風呂上りに涼んでいる時ですが、このスケール感で議論を始めてしまうと、「良い人生を過ごすためには、30分以上の入浴を1日に3回以上行いましょう」ということを浸透させていけばよいということになってしまいます。もちろん、これは私が望んでいる帰結ではありません。

もっと大きなスケール感で、人生を長い目でとらえて、議論をする必要があります。そのために、長い歴史の中で積み重ねられてきた「幸福」についての議論をもとに、「幸せな状態」を定義し、具体的に自分ができることを考えたいのです。

 

この目標に向けて、まず手にした本が長谷川 宏(はせがわ ひろし)さんの「幸福とは何か」です。とてもテーマが分かりやすいタイトルで、即決で購入しました。長谷川さんは哲学者で、ヘーゲルの本の訳者として有名な方のようです。

私は哲学に触れた経験はないので、知識が足りない場面が出てくるかもしれませんが、自分の疑問を解決するための読書というスタンスで(時に乱暴に)読ませていただきたいと思います。

 

この記事では、前書きと序章の内容を押さえます。

 

まずは、前書きからほんの方向性を理解します。

 (幸福とは日常的な言葉だ)が、幸福とはなにか、どうしたら幸福になれるか、といった形で幸福を主題として目の前に引きすえたとなると問題をどこからどう解きほぐしたらいいのか、はたと困惑する。

 まさしく、今の私の状況です。

共同体の秩序と個人の生きかたに裂け目が生じるとき、幸福への問いが本質的な意味をもってくると考えられる。(中略)(三つの激動の時代を取り上げ)過去のそうした経験が、私たちの現在の生きかたとどう交差するのか。―それを問うことがこの本のねらいである。

 幸福についての議論が盛んに起きた時代の哲学者たちの思想を、今の時代にも適用してよいのか、を考えていくようです。

 「幸福な状態」の定義付けをしたいので、内容を深追いするのではなく、各時代の幸福の定義に集中して本を読むとよさそうです。

 

次に、長谷川さんは序章にて、 幸福の基本的な条件 を以下の四つだと示します。

  • 静けさ
  • 平穏さ
  • 身近さ
  • さりげなさ

とても地味で素朴な印象を受ける言葉たちです。

人々の生活の中で、印象に残る幸せな時間とは、にぎやかで騒がしい時間かもしれません。しかし、そういった普通ではない時間の土台になっているのは、坦々とした平凡な日常だと言うのです。確かに、 お祭りがあるから幸せでいられる という状態は、誰しもが望む幸せな状態とは言えない気がします。

時代が変わりゆき、都市化が進むと幸せの形も変わり、平凡を求めなくなるのではないかと思ってしまいます。しかし長谷川さんは、騒がしい世の中になったとしても、それは平穏な暮らしのリズムを壊すものではなく、逆に近代社会の中で、安息や静穏を求める気持ちは強くなっているというのです。

 

特別な時間はあくまで特別なもので、幸せとは日々積み重ねている時間の中にある。財産を増やすことや、自分の能力を高めることが幸せなのではなく、その土台となっている時間の中にこそ幸せはある。

日常の生活が幸せの中にある、幸せをまとっているような感覚なのかなと思いました。人生を長い目で見たいと思って読み始めたので、私は納得できましたが、皆さんはどう思いますか?

なんとなく幼少期の人情味のある温かさを思い出しながら読み進めていきたいと思います。

 

続きは次回です。